子どもの話

鏡で自分を見ると、思った以上に身体がゴツゴツしていることに気づく いつからこんなに変わってしまったのか 昔はこうじゃなかったなと思う
放浪息子という漫画は男の子になりたい女の子と、女の子になりたい男の子の話だ 思春期という特別な時期に性に振り回されるというのは別に特別な誰かの事だけではない 思い返すと自分も昔は女の子になりたかったことがある いや、厳密にいうとそれも違っていて、たぶん性が別れたくなかったのだ
中学生だった自分は体も華奢で声変わりも遅くまだまだあどけない容貌だった 多くの人もそうだろう その時期はまさに女でも男でもない宙ぶらりんな瞬間だ 何者でもないし、だからこそ無限の可能性がある

今の性自認は男であると言い切れるし、男の自分に誇りのようなものも持っている しかし昔の自分は確かに男になりたくなかったのだ 性が決定してほしくなかった そんなことをこの漫画を読んで思い出したりした
物語の最終話で、女の子は成長し 男の子になりたい という感情が薄れていることに気づき涙を流す 彼女の宙ぶらりんな期間はそこで確かに終わってしまったのだ 憶えていないが自分にもきっと知らず知らずのうちに、この子のように諦めてしまった瞬間があったのではないか と思う そのとき何を感じ何を考えていたのか今はもう思い出せないことが寂しい